EMPTY STORE

日々の雑感が惰性で書かれた怪文書

感想『アイドリッシュセブン』第一部 アイドルの素質と葛藤

物語を見て、1番先に考えるのは「どう自分に似ているか」ということだ。自分との共通点を探した方がキャラクターに感情移入が可能だし、その分キャラクターと一緒に泣くことが出来る。「これは自分の物語だ!」と思うまでは行かなくとも、自分がその立場になった時どう考えるか、どう立ち回るかということを考えて、ストーリーと重なった時はキャラクターがより親身に感じられるだろう。

 

アイドリッシュセブン』はそういった意味では、人物の設定が細かくて人間味が深いため、感情移入しやすい作品だと感じた。悩み、葛藤する姿はまさに若人特有のものだし、誰もが経験した人間関係のこじれも扱っているので、舞台は芸能界という特殊なものながら、親しみを覚える作品だと思う。

f:id:white_seewing:20191016114931j:image

第1話 shaking your heart

第1話 shaking your heart

 

以下、ネタバレを挟みつつ第一部の感想。

 

物語はおそらく主人公たちであろう、7人の青年がバスケットボールしている風景から始まる。私は一体何を見せられているんだろう……と思ったけれど、読み進めていくうちにどうやら親睦のためのスポーツだったことが分かる。

 

それが終わり、呼び出された社長室に行くと、

じゃあ、さっそくオーディションをして、4人落としてくれる?

と言われてしまうが、私が社長に直談判してなんとか7人でIDOLiSH7が結成された。

 

私はマネージャーとして新人なので、インディーズデビューライブでキャパ3000人の会場を押さえてしまったり、路上ライブで好き勝手行動するメンバーがいたり「この時点でもう解散の危機では?」とも感じたが、謹慎中に主人公である七瀬陸の生き別れた兄、天が在籍するTRIGGERのライブを見て聞いて、どうやらアイドルとして自覚も育ち、俺たちのアイドル道はここから始まる───────というのが物語の導入だ。

 

さて、この第一部において外せない存在は、主人公の兄がいるTRIGGERというグループだ。

 

センターの九条天はアイドルになるために陸を含めた家族を捨てた非情な男として描写されている。ストーリーを通じてプロ意識が高くて、自他ともに厳しく終始トゲがある印象だったが、その実、終盤になるにつれメンバーの情にほだされた一面や、弟を溺愛するような人間らしい側面を見せるなど美しい顔と合わせてツンデレラとでも言うのが適当であると感じられた。

 

リーダーの八乙女楽は凍っているような真っ白い肌の冷ややかな美貌と、メンバーたる仲間を信頼する兄貴肌、更には気に入らないことがあれば父である社長でさえ殴りに行く熱い内面を持ち合わせた、真逆の性質を表裏一体で体現している男である。

 

色気担当の十龍之介はワイルドな筋骨隆々としたエロエロボディで女を侍らせている────という設定だが、実生活では奥手で純潔といういわゆるギャップ萌えを意識したキャラクターである。更に沖縄出身で方言萌えも兼ね備えた、明るい性格が魅力だ。

f:id:white_seewing:20191016145552j:image

彼らは芸能界でたった1年の長ながら、主人公たちを導き、励まし、成長させて、最後に対立するというまさに理想的な先輩の立ち回りをしてくれるのである。カッコよすぎる……。

 

TRIGGERは立場上ラスボス悪役キャラとして扱われるが、その全てはIDOLiSH7のことを思ってであるし、本人たちが不本意な社長の新人いじめには対抗するというTRIGGERのアイドルとしての意地が伺えるのが素晴らしい。

 

主人公たちの意思、先輩アイドルの思惑、マネージャー含めた運営側の大人の事情が絡み合った複雑なストーリーが『アイドリッシュセブン』の第一部なのである。

 

第一部は、最終的には大晦日紅白歌合戦をリスペクトしているだろう「ブラックオアホワイトミュージックファンタジア」という音楽番組でTRIGGERに打ち勝つIDOLiSH7が描写される。既定路線と言えばそうだが、これまでの主人公たちの積み重ねを思うと感慨深い。

 

そこにはこれ以上なく綺麗にまとまったストーリーがあり、余韻もエンディングに流されていく。二部から新たなキャラクターが追加されてさらに複雑に絡み合う物語を思うと「やだ!これ以上読み進めたくない!」と駄々をこねたくなるが、一層成長したIDOLiSH7が見られるなら、それも悪くないかな……と感じた。

 

Viva! Fantastic Life!!!!!!!

Viva! Fantastic Life!!!!!!!